昨年、兄に子供ができた。叔父になった。家系が途絶えなくてよかった。
自分のいちばん古い記憶の話。夜、目を覚ますと、四方の壁の上のほう、和室でいうところの欄間の部分に光が走っていた。赤や青の電流のようなジグザグの光が暗い部屋を囲んでいた。それがおもしろくて自分はゲラゲラ笑った。しばらくして、その光が得体のしれないものだということに気づき、怖くなって泣いた。横で寝ていた親が自分を抱きかかえあやした。
親の部屋で寝ていた時期は限られる。自分の意思を言葉で伝えられなかったので、少なくとも幼稚園に入る前の話だ。または夢だ。
だから、赤ん坊の夜泣きに理由など無い、腹が減ったわけでもトイレに行きたいわけでもなく、本人にしか見えないものが見えているだけなのではないか、と。